解答
Clarityというツール自体は無料です。制作会社に発生する費用は、その先の「データ分析」「月次レポート」「改善施策の提案」など、人の作業に対するものです。この改善プランに費用を払うかどうかは、Web広告に費用をかけているかどうかで判断が変わります。
広告を出している場合、改善プランに費用を払う価値が出ることがあります。広告で集めた訪問者の動きを観察し、ランディングページを直す材料になるからです。ただし計測タグはホームページを少し重くします。その兼ね合いを見て判断します。
広告を出していない場合、ある程度の閲覧数があるホームページでなければ、必要ないと考えています。閲覧数が少ない段階では、観察しても改善の材料が出てこないので、制作会社の作業もデータ待ちで止まります。
なお、この記事は中小企業の規模のホームページを前提にしています。
ホームページの改善は「仮説」から始まる
ホームページの改善とは、訪問者が「どこで離脱しているか」「どこでつまずいているか」を特定し、原稿や導線を直す作業を指します。その出発点は、必ず「仮説」です。仮説のないところに観測ツールを入れても、画面に色が出るだけで、意味がありません。
広告に費用をかけている場合
広告を出していると、毎月一定の訪問者がランディングページに集まります。ヒートマップはサンプル数の問題をクリアしやすくなります。改善したいページが決まり、仮説があり、観察結果からランディングページを直す体制があるなら、観察→修正→検証のサイクルが回ります。広告の費用対効果の改善につながります。改善プランに費用を払う意味が、ここで出てきます。
ただし、計測タグはJavaScriptの実行を増やします。広告のランディングページは表示速度が成果に直結するので、計測の価値と速度低下の影響を比べて判断します。
広告に費用をかけていない場合の試算
広告を出していないホームページは、訪問の大半が検索エンジン経由です。検索からの訪問が少ない段階では、ヒートマップを入れても有意なデータが返ってきません。
たとえば月間600ページビューのホームページで考えます。BtoBサイトのお問い合わせ率の平均は、おおむね1%前後とされています。
- 入れる前:600 × 1.0% = 月6件
- 改善プランで平均から1.3倍に効いたとして、お問い合わせ率1.3%
- 入れたあと:600 × 1.3% = 月7〜8件
増えるのは月に1〜2件です。この1〜2件のために、改善プランの月額費用と、運用の工数が乗ります。
同じ費用をSEOの強化に回すなら、検索からの流入そのものを増やせます。流入が増えれば、お問い合わせ率を動かさなくても、お問い合わせの件数は増えます。優先順位としては、SEOを強化して閲覧数を増やすほうが先で、改善プランの契約はその後の検討事項です。
Microsoft Clarityがサイトに与える影響
Microsoft Clarityは、タグ(JavaScript)を1つ追加することで訪問者の操作を記録するツールです。「サイトが重くなりますか?」の答えは、次のとおりです。
- 計測タグは非同期で読み込まれ、ページ表示の初動を直接遅くするものではありません
- ただしJavaScriptの実行は発生し、Core Web VitalsのINP(操作への応答性)に影響することがあります
- セッション録画は、訪問者の操作情報をMicrosoftのサーバーに送ります。プライバシーポリシーへの記載と、必要に応じてCookie同意の設計が必要になります
「ツールが無料だから入れていい」は、技術面とコスト面だけを見た判断です。データを取る目的と、個人情報を外部に送る責任が増えることを、発注者として引き受けるかを併せて判断します。
「Clarityで改善プランを組みます」が意味すること
広告を出していないサイトに「Clarityで改善プランを組みます」と提案するというのは、仮説とサンプル数の見立てを、見積りに入れていないということです。それより先に、「改善プラン」という商品が来ます。解析ツールを売りにしている制作会社で起こりやすいパターンです。
順番が違うだけで、作業そのものは動いています。タグを入れ、管理画面を整え、月次レポートに「Clarityを観察しました」と並ぶ。形としては、改善に取り組んでいるホームページに見えます。
ただ、サンプル数が足りないので、出てくるものがありません。「観察しましたが、特に傾向は見られませんでした」という報告が、毎月続きます。「改善している」と「改善されている」は別の話です。動きはあるけれども成果は動かない作業に毎月の費用を払い続ける形は、見積りの構造として、もったいないところです。
発注者の確認ポイント
「Clarityで改善プランを組みます」と言われたとき、確認できることがあります。
- このヒートマップで、何の仮説を検証するのですか? 答えられない場合、改善プランの中身が「タグを入れること」止まりになっている可能性があります
- 今のサイトの月間セッション数で、有意なデータが取れる見込みはありますか? 「とりあえず様子を見ます」と返ってくる場合、データに対する見立てが立っていません
- 改善プランの月額費用は、何の作業に対する対価ですか? タグ設置・データ閲覧・月次レポート・施策提案・実装、それぞれどこまで含まれるかを確認します
- プライバシーポリシーの更新やCookie同意の対応は、商品に含まれますか? 含まれない場合、発注者側の作業として残ります
やまだやの考え
ヒートマップやMicrosoft Clarityでできる改善は、基本的に「単一ページ」の改善です。あるランディングページのファーストビューを直す、フォームの離脱を減らす、ボタンの位置を変える——観察するのも1ページ単位、直すのも1ページ単位です。
広告を出していないホームページでは、その前にやることがあります。ホームページ全体の原稿・構造・内部リンクを設計し直すことです。これがそのままSEOに効く作業になり、検索からの流入が増え、ホームページ全体のページビューが上がります。
1ページのお問い合わせ率を1.3倍にする話より、ホームページ全体のページビューを増やすほうが、お問い合わせの件数は大きく動きます。閲覧数が少ない段階で動かせる余地は、ここに集中しています。
単一ページの改善は、ホームページ全体のページビューが十分に積み上がってから、そのページの転換率をもう一段押し上げたいというときに使うものです。優先順位としては、まず全体を動かす側です。
やまだやのセカンドオピニオン
すでにヒートマップやMicrosoft Clarityでの改善プランを契約しているサイト、これから契約しましょうと提案されているサイトについて、現状の診断ができます。
- 広告の出稿状況と改善プランの目的が一致しているか
- 今のアクセス規模で、有意なデータが返る状態か
- 改善プランの月額費用が、何の作業に対する対価になっているか
- 解析より先に、原稿・構造・導線で動かせる余地があるか
やまだやで作り直すこと前提ではありません。今の制作会社に依頼すべき内容として整理してお伝えすることもできますし、解析と改善設計をやまだやで承ることもできます。